2013年5月22日水曜日

豊田章男社長のカーレース参加に物申す

トヨタ自動車の豊田章男社長(57)が、5/19に開催されたドイツの自動車レース「ニュルブルクリンク24時間レース」に出場し、175台中37位、車種ごとに設定されたクラス別では10台中の2位で完走しました。章男社長は4人のドライバーの内の一人として、2時間ほど運転をこなしたようです。

豊田章男社長は、ニュルブルクリンク24時間レースへの出場は、2007年に続き2度目。車好きの方はご存知でしょうが、章男氏はかなりの車マニアです。カーレースに出場する為に10年位トレーニングを積んでおり、ニュルブルクリンクのレース等にも出られる「国際C級ライセンス」も取得しています。ドリフト等のトレーニング映像は、Youtubeにも公開されており、章男氏がドライブ時に使う「モリゾウ」の愛称は、自動車好きからも認められている存在です。


しかし、トヨタ自動車の株主である筆者は、章男氏のレース参戦には極めて否定的です。これは株主にとっても、レーシングチームにとっても、そしてトヨタ自動車という会社全体にとっても、メリットのない行為です。はっきり言ってしまえば、章男氏の自己満足に、トヨタ全社が振り回されている状況です。

まず、レースチームにとっては、章男氏の存在はお荷物そのものです。所詮はC級ライセンスであり、プロのドライバーである他の3人にとは、腕前は比べものにならない訳です。そして章男氏は57歳、反射神経等は衰えており、世界一過酷と言われるニュルブルクリンクのコースを走るには、荷が重い存在です。ましてや相手は社長です。他のドライバーやメカニック等のチームメイトが、腫れ物に触るような感覚であったことは、想像に難くありません。もし章男氏がハンドルを握った2時間分も、プロのドライバーが運転していれば、更に順位は上がっていたはずです(部門1位もありえたかも)。

次に、トヨタ自動車全体のイメージについてです。確かに車好きの人からは、「モリゾウは普通の社長とは違うぜ!」と好意的に見られても、一般人は果たしてどう思うでしょうか?57歳の初老のおじさんが務まるなんて、ショボいレースなんだろうなと勘違いされるのでは? というより、社長が道楽で自動車レースをやっていると受け取られ、「それでいいのかよ・・・」と呆れられるのでは? 少なくとも、筆者の周り(カーレース等に詳しくない人)の反応は、全て否定的なものでした。

そして株主にとっても、このイメージ戦略は納得行くものではありません。もし社長が事故を起こして死んだりしたら、一時的とはいえ株価は暴落する可能性が高いです。無論、トヨタの社員達にとっても、本業と関係ない事で振り回される訳で、到底歓迎されることではありません。

わざわざ社長が、カーレースなんぞに出しゃばる必要があるのか?そんな余裕があるなら、会社の本業をもっと伸ばせよ!と誰もが思っているはずです。そもそも、トヨタはF1参戦時の黒歴史がありますから、カーレースに出ることなんて、単なる浪費に過ぎないと思いますし(F1の件については改めてページを設けます)。

いずれにせよ、豊田章男社長のドライバー参戦は、彼自身以外は誰も得しない、最悪の行為だと言えるでしょう。自己満足は完全プライベートで行い、トヨタの名の付いた場所で行わないで頂きたいものです。

2013年5月11日土曜日

トヨタ業績と為替レート~1円で利益が350億円動く

つい先日、トヨタ自動車の2013年3月期決算が発表されました。売上高、利益、共に当初予想を大きく上回る好業績でした。その理由は、アベノミクスによる為替レートの円安にあります。

・連結売上高=22兆641億円(前年同期比+18.7%増)
・営業利益=1兆3208億円(同+271.4%増)
・純利益=9621億円(同+200%超の増加)

いずれの数値も、アナリスト予想や、トヨタ自身が発表していた予想よりも、良い数字でした。これを受けて、トヨタの株価は上昇し、実に5年ぶりに6000円台を回復しました。ちなみに、過去のトヨタ自動車の売上高・利益はリンク先のページで紹介しています。

好業績の理由は、決算期に円安になった事です。ご承知のように、昨年末に民主党政権が倒れてから、為替レートは一気に円安ドル高に進んでおり、1ドル=100円の節目を迎えています。トヨタは前期中、想定為替レートを80円前後で発表していたので、現在のレートは大幅なプラスサプライズになっています。

トヨタ自動車は、為替レートが1円動くと、営業利益がおよそ350億円動くとされています(ちなみに日産だと150億円)。想定為替レート80円に対して、実際のレートが100円近くにまで円安が進んでいるので、これだけで約7000億円もの「為替差益」が生じている事になります。

トヨタはリーマンショック以降、業績の不振が続いていましたが、その理由は大きく二つありました。一つは、リーマンショックの景気の落ち込みによる、世界的な自動車販売不振。そしてもう一つが、為替レートの異常な円高です。不景気による販売不振に関しては、日本政府がエコカー補助金を出したように、各国でも販売補助制度が遂行されていましたし、トヨタ自身もプリウスを大幅値下げするなど、販売促進の努力を行ってきました。

しかし、為替レートの円高は、トヨタ自身はどうしようもありません。世界各国は、自国の輸出を優位にすべく、リーマンショック以降に通貨切り下げ合戦を行っていましたが、日本だけは蚊帳の外でした。財務省や日銀、そして民主党がタッグを組んだ「デフレ利権」が経済を牛耳っていた為、為替は円の独歩高でした。トヨタを初めとする輸出企業は、このデフレ利権の為に犠牲にされてきたのです。

しかし、民主党は崩壊し、デフレ利権の大王=白川日銀総裁は職を追われました。安倍自民党と黒田日銀新総裁は、円安・インフレを目論む「アベノミクス」を実行し始めたので、余程の天変地異でも起きない限り、1ドル=70円台というような馬鹿げた円高はもう起きないでしょう。

このままドル円相場が、110円にまで進行すれば、トヨタの営業利益はさらに3~4000億円増加します。1ドル=120円なら、7000億円増えるので、2008年に付けた史上最高益の更新も視野に入ってきます。トヨタ自動車とその株主にとっては、アベノミクスは強烈な追い風であり、大歓迎の政策なのです。


2013年5月7日火曜日

トヨタの売上高推移とグラフ


このページでは、トヨタ自動車の2000年以降の売上高と純利益の推移について分析していきます。まず、トヨタ自動車の売上高及び利益のピークは、 2008年度でした。

2008年度のトヨタの売上高は24.8兆円、純利益は1.7兆円にものりました。もちろんこの業績は、世界の自動車メーカーの中でも最大のものです。しかし、リーマンショックの影響を受けた2009年度、トヨタ自動車の業績は急変します。売上高は5兆円以上も減り、純利益についてはなんと赤字に転落しました。まさに天国から地獄へ転落したかのような急変ですね。


ここまで業績が急激に悪化した理由は、主に会計上の問題です。リーマンショックを受けて、世界の景気が急激に悪化したため、世界中で自動車の販売台数が急激に落ち込みました。また、急速な円高が進んだため、トヨタ自動車の想定レートを大きく上回っていたことも、赤字転落の大きな理由です。そしてトヨタ自動車では、リストラを急速に進めたり、減損処理を前倒しで行ったため、 2009年に一気に赤字になったのです。その証拠に、 2010年度の決算では、売上高はほぼ横ばいにもかかわらず、黒字に転換しています。

2009年以降のトヨタ自動車は、プリウスを中心に販売台数を伸ばしていますが、利益率が決して高くありません。プリウスは、 同じハイブリッドカー であるホンダのインサイトとの競争のため、従来よりも大幅に安い価格で繰り出さざるをえなかった事が理由です。元々プリウスの定価は約260万円でしたが、同じハイブリッドカーであるホンダの新型インサイトが、189万円という遙かに安い値段を打ち出した事で、事態は急変します。トヨタも価格対抗せざるを得なくなり、プリウスを205万円からという「大幅値下げ」を余儀なくされたのです。

しかし、トヨタにとって売価の低いプリウスばかりが売れて、レクサスやクラウンのような高級車の売れ行き芳しくありません。これでは、2008年のピーク時の売上高&利益率を回復するのは難しいでしょう。

現在、世界の自動車販売台数でトヨタ自動車はトップですが、利益率はかつてのような高さを取り戻せてはいません。2012年度決算のトヨタの売上高は17兆5千億円と、この3年間はほぼ横ばい水準です。確かに1ドル=70円台という未曾有の円高がネックだったのは事実で、民主党政権や日銀に足を引っ張っぱられた格好です。トヨタ自動車は、売上高の海外比率が約70%なので、為替が円高だとダメージは非常に大きくなります。

そして何より、トヨタの株主にしてみれば、販売台数が伸びること自体はさほど意味なく、利益率が伸びることこそ重要です。プリウスや、その後継機種であるSAIなどがいくら売れでも、売上も利益率も低いので、株主にとっては決して良い状況ではありません。トヨタの株主は、もっと利益率の高い車をたくさん売ることを求めています。

2013年5月2日木曜日

トヨタのマーケティング戦略はイケてない

トヨタ自動車の株主として、最も懸念していることは、マーケティング戦略の弱さです。作る自動車の品質は高く、環境技術も最先端を行っているはずです。だけど、世界市場ではさほど売れていないし、盤石だったはずの日本市場でもかげりが見え始めています。その原因は、マーケティング戦略に失敗している事なのは明白です。

まず、海外市場~特に成長著しいアジアの新興国に進出するのが、致命的に遅れています。グローバルマーケットで最大のライバル会社の一つであるフォルクスワーゲンは、早くから中国市場に進出して基盤を築いていました。また、中国と比べても更に発展途上だが、将来性はそれに匹敵する市場であるインドでも、トヨタの存在感はゼロ。日本では負け組といわれているスズキは、1981年からインド市場に進出し、現在最大のシェアを持っている事からして、これもトヨタの戦略ミスだといわざるを得ません。トヨタは欧米ばかり見て、将来性の高いアジア新興国を軽視してきて、そのツケが回って来つつある状況です。

また、日本市場でもトヨタがシェア一位である事には変わりありませんが、将来まで安泰とは言えないかもしれません。特に若者に対するPR、若者向けの車作りに失敗している事は、致命的だと思います。売れない原因を「若者の車離れだ」と責任回避発言をくり返し、中高年向けの車作りに終始し続けた事は、投資家から見て腑に落ちません。マークXなどはその典型で、若者ぶりたいオヤジ向けの典型車ですからね。

という具合に、現在は世界一の自動車販売台数を誇るトヨタですが、一寸先は闇だと言っても過言ではありません。特に、簡単な機構で生産できる電気自動車が普及すれば、自動車産業は「資本集約型産業」では無くなり、中小メーカーが台頭する余地が広がります。中国やインドは、人口からして将来的には、アメリカをも上回る世界最大の自動車マーケットになることは確実です。今は無名の中国やインドの地場企業が、トヨタを上回る販売台数を稼ぐ時代が来ても、不思議ではありません。

ですからトヨタ自動車は、欧米先進国マーケットや日本の中高年向けといった「目先の利益」に固執せず、将来を見据えたグローバルマーケティング戦略を考え直して欲しいものです。無論それは、北野武やジャンレノをCMに使うとかいった、単に奇をてらっただけのマーケティングとは全く違います。

日本企業は技術力はあるが、マーケティング戦略に失敗しているから、グローバル市場で負けつつあります。この常識を打ち破るのは、日本最大のグローバル企業である、トヨタ自動車こそが先陣を切る存在でなければいけないはずです。当サイトでは、今後もトヨタのマーケティング戦略に物申していきたいと思います。